ずっと、雨が続いていた。
来る日も来る日も曇天が心を憂鬱にさせ、空気をじめっとさせ、練習会場の室内変更を余儀なくさせ。
よくドラマや小説なんかで、空が泣いているだのなんだのと、そんなありきたりというかもはや常套句というか、そんな表現があるが、いやいや泣きたいのはこっちなんですけどってくらいには雨が降り続いていた。
空は常に暗くて、見上げたところで綺麗でもない。さらには上からは雨粒が落ちてきて、顔を上げても濡れてしまうだけだ。傘をさせばその空模様すら分からない。
しばらく空なんて見上げることができなかった。雨の日はみんなの顔が俯く。だから人々の心は陰鬱になっていくのだろう。
最近公開された「天気の子」。観てないし、観る予定もないのだが、鬱陶しいくらいにテレビで流れてくる宣伝とコラボCMのせいで内容だけは分かってしまう。
願えば天気を晴れにしてくれるらしい。知らんけど。
そんな存在を切に願った梅雨期間であった。
そして……。
いや、まさか、そんなはずはないと思うけれど。
誰のイタズラだろうか……。
夏休み開幕と同時に、空が晴れた。
練習日和というか、晴れすぎて暑すぎて、もはや練習日和じゃないまである。
選手諸君は、もう夏休みの宿題を終えたと思う。
残りの夏休みはすべて、自由時間というわけだ。
一日は24時間ある。
しっかり8時間寝ると考えれば、活動できる時間は16時間くらいだろう。
朝昼夜のご飯タイムをざっと1時間ずつ見積もって残り13時間。
顔を洗うとか歯を磨くとか風呂に入るといった行為を多く見積もって2時間でやるとすれば、残り時間は11時間。
レスターの練習や塾などの習いごとが重なったとして、行き帰りの移動時間も含めてざっと4時間。これで残り7時間。
まだ一日の約三分の一は残っているこの事実。
選手たちはこの時間をどう使うか、だ。
ツイッターでも書いたが。
今日はもういいや。明日やろう。
夏休みの宿題でも、サッカーの練習でも、この考えになる者は絶対に成長しない。
明日やろうって思うやつは、明日になったってやりゃしない。
今日できることを今日やらないやつは、明日になってもやらないんだよ。
上の動画のように、弱い自分に勝てるか、だ。
別に一日中練習しろとか、1時間も2時間も練習し続けろってわけじゃない。こんな炎天下でだらだら練習しても意味なんてないし、熱中症になるし。
短くてもいいから、質の高い練習を、一日に何回できるかである。
例えば、試合のハーフと同じ20分、集中して練習する。そのあとに1時間フレッシュな時間を過ごす。そのあと、また20分練習する。
みたいな感じで、短くてもいい。間が空いてもいい。というか、その方がいい。
だらだらやっても意味はない。
重要なのは、質の高さだ。
努力は必ず報われる。よく聞く言葉だ。
しかし、ありゃ嘘だ。
努力は必ず報われるなんて言葉は、世間の印象操作で強引に作ったものである。
世間はダメな人間を排除したい。じゃないと未来が破滅してしまう。だから、人はそうやって嘘を作った。信じれば成功するなんていうのは聖者を作ろうとした時に生まれた文句で、努力は必ず報われるなんて言葉は誰かが人々に努力をさせるためにと作った嘘なんだ。
世間はそうやってひねくれ者を、怠け者を作らないために幻想を押し付けてくる。
そう。やればできるようになるなんて、信じていれば成功するなんて、ただの幻想だ。
やってるだけで、信じているだけで、できるようになるわけない。
努力の仕方が間違っていたら普通に報われないし、何も考えずやってたら努力は裏切ってくるし、うまくなんてなれないのだ。
どんな練習をすればいいかは言ってあるし、どんなことを意識して練習すればいいかも伝えてある。
忘れたら聞いてこい。分からなかったら聞いてこい。
何も考えずにただやっててもうまくはならないし、分からずやってても絶対意味はない。もちろん、間違ったことを意識しててもうまくならない。
算数ドリルをやるとき、問題を解くための公式がわかんなかったら算数ドリルできないでしょ。間違って公式覚えてたら間違いだらけになるでしょ。そういうことだ。
正しく脳を動かし続けなければいけないのだ。
相手を想像し、どのタイミングで足のどこに力を入れ、姿勢をどのようにしてドリブルするかで相手を抜けるかどうかは決まってくる。自主練習でもそこをしっかりと意識してもらいたい。
ドリブルで最も重要なのはそこだ。
どれだけウエイトトレーニングをしても、フォームが悪い、つまり姿勢が悪いピッチャーはいいストレートを投げることはできない。
体操とか陸上とかもみんなそうだ。オリンピックとかにでてくる選手たちはみな、姿勢が良いし、力を入れるタイミングも絶妙だ。
サッカーは足でボールを扱うため、ボールタッチに目を奪われがちだ。だから姿勢とか力の入れ方は蔑ろにされる。
けれど、ちょっと待ってほしい。サッカーも足でボールを扱うという前に、野球とか陸上とか体操のように、自分の体を使うもの、つまりスポーツなのだ。
だから自分の体をうまく扱えない者はドリブル技術も向上しない。
ドリブル時の姿勢は? 足の角度は? どのタイミングでどこに力を入れる?
最近はスクールでもそこをフォーカスしてやっているので、気になる方はぜひスクールへ!
もちろん、ただのドリブルではなく「認知」つまりドリブル時にドリブルだけにならないようにするための練習になっているので、他スクールとはひと味違う、試合で通用する本物のドリブルを教えています!
最近流行りの久保君さんとか、認知に特化された選手だ。バルサのカンテラでは口を酸っぱくして言われていたらしい。
あの小さい体で、屈強な外国の選手たちと渡り合うために必要なことは、やはり「認知」の能力なのだと、分からせてくれた。やはり、ただのタッチドリブルでは世界に通用しないようだ。重要なのは、頭の中というわけだ。
っと、宣伝はここまでにして……。
止まない雨はない。
言い古された言葉だ。
確かにそうだ。
実際、その通りとなった。
けれど、その逆もまた然りだ。
雨はまた、必ず降る。
勝ち続ける時もあれば、負け続けることもある。どれだけ頑張っても成功しないことなんてままあるし、夢が叶わないことなんてざらだ。
でも、やらないとできるようにはならない。
俺はこれだけのことをやったと。すべてをやったと。だから、後悔はないと。
そう思えるように。
雨が降り始めても、そうやって顔を上げていられるように……。
――悔いのない、夏休みを。